定年退職しても65歳まで年金がもらえない世代が定年を迎えるようになりました。定年と同時に仕事をやめるとまったく無収入の期間ができることになります。以前にも増して、きちんとした準備が必要です。
年金・健康保険などの公的保証制度に不安が広がる中で、地方自治体様や民間企業様が自らの退職予定者のためにリタイアメントセミナーを開いたり、金融機関様がお客様向けに退職準備セミナーを開いています。
そのようなリタイアメントセミナーで、講師として、定年退職予定者の方へ定年退職後の健康保険、年金、資産運用などの心配ごとをわかりやすく解説し、不安のない生き生きとしたセカンドライフを送れるようにお手伝いをしています。
セミナーの様子・抜粋(YouTube動画)
https://youtu.be/fUsOdgvERS8
日経新聞2022年3月23日夕刊
パートの社会保険加入 手取り減でも年金に恩恵
社会保険労務士 森本幸人さん
50代の主婦です。パート先の職場が社会保険の適用対象になるようです。会社員の夫の定年が近づく中、手取りの減少は痛手ですが、勤務時間を減らさず加入すべきでしょうか。
従業員数が501人以上の企業の場合、短時間勤務でも所定労働時間が週20時間以上などの条件を満たす人を社会保険に加入させる義務があります。今年10月からはさらに範囲が拡大し、従業員数が101人以上の企業に勤める人も加入対象になります。手取りの減少を避けるために就業調整を検討する人もいますが、基本的には加入を勧めます。保険料負担が生じても、自身の厚生年金を持って受給できる年金額を増やし、将来に備えたほうがいいと思います。
正社員にも関係ある話です。定年を迎え再雇用期間を終えた後も75歳になり後期高齢者医療制度に入るまでは何らかの公的医療保険に加入する必要があります。再就職先を通じて健康保険に加入できれば、国民健康保険と比べて保険料負担を抑えられる可能性があるためです。
国民健康保険の保険料が年金収入も含めた所得を用いて算定するのに対し、会社の健康保険の保険料は給与と賞与が計算に使われ、半分は会社が負担します。勤め先を通じて健康保険に加入する方が自己負担が少なく済みます。今回の改正で社会保険に加入できる企業の選択肢が広がるため、再就職先を探す際にも考慮するとよいでしょう。
また、65歳以降も厚生年金に加入して働き続けて生活資金を確保すれば、老齢基礎年金を繰り下げしやすくなります。夫が主たる生計の維持者で、妻が短時間労働をしている家庭の場合、夫婦のいずれも基礎年金のみ繰り下げることを勧めています。夫が厚生年金も繰り下げると配偶者加給年金が受け取れなくなるほか、妻は夫に先立たれると差額として支給される遺族厚生年金の額が減るだけで繰り下げの効果を十分に得られない恐れがあるためです。
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